Beaulieu 4008



ムービーカメラメーカーとして名高い「ボリュー Beaulieu」
1970年代に発売されたスーパー8カメラ『4008』シリーズは、
サイレント8mmカメラとしてのトップに君臨する1台で、今でも愛好者が
多いカメラだ。現行だった70年代の日本での価格は約50万円(!)
現在でも、アメリカを中心にファンが多いようで、インターネットのサイト
での情報も多い。

このカメラの特徴は、プロスペックともいえる、充実した機能の数々と、その
クラシカルな美しいデザインだろう。ワタシはなんといってもこのデザインに
興味がひかれてしまった。
多くのスーパー8・シングル8のカメラは、四角い箱型のボディデザインを
基本にしているのにたいして、4008は丸みを帯びた独特のスタイルである。
それは16mm用カメラのR16と共通する。というよりも、4008という
カメラは、16mmカメラのクオリティで作ってしまった8mmカメラといえ
そうだ。

スペックを説明すると、まずはCマウント式のレンズ交換ができる、数少ない
スーパー8のカメラであるという点。
スーパー8・シングル8以前のレギュラー8の時代には、ズームレンズの技術
が発展途上だったため、単焦点のレンズを交換式にしたり、ターレットと呼ば
れる回転式のレンズ交換が一般的だったが、スーパー8の時代になって、カメ
ラもEE(自動露出)や電動ズームといった機能の開発が進み、固定式の専用
ズームレンズ(しだいに高倍率・大口径化していく)が多く採用された。
その中で、ボリューだけは何故かCマウント交換式に固執し、レンズ自体にズ
ーム用と、電動絞り用のモーターを内蔵し、カメラ側でそれを制御して自動露
出・電動ズームを実現した。ボリューは16mmカメラ用のレンズも多いし、
カメラのカタログには、各種35mm一眼レフ用のCマウントアダプターが掲
載されている。
ただ、8mmカメラは、その画角が小さいため、16mmカメラ用のレンズで
も望遠になってしまうし、35mm用レンズは約6倍の焦点距離に相当するの
で、例えば35mm用の50mm標準レンズは300mmの超望遠レンズにな
ってしまい、一般的な撮影には、あまり必用がないと思われる。

それに、シュナイダー製とアンジェニュー製がある専用のズームレンズ(これ
は最初の8〜64mm/F1.8の8倍ズームから、6〜66mmF1.9、
6〜70mm(6〜80mm)F1.4とスペックアップした)
が大変高性能で、この焦点距離内のレンズは、特に他のレンズを必用としない。

しかし、例えば野生動物を撮影したり、映画のワンシーンをスーパーロングシ
ョットで撮影して、その描写感を表現したりといった超望遠撮影においては、
レンズ交換ができることは、たいへんメリットがあると思う。

また、4008ZM・ZM2は毎秒2コマ〜70コマ、ZM4では最高速80
コマ/秒の高速度撮影が可能であり、これらは8mmカメラの中ではトップク
ラスのコマ数である。また、このコマ数(フィルムスピード)設定が、多くの
カメラが切り替えスイッチ式(18・24・36・54コマといった速度にデ
ジタルに切り替える)なのに対して、目盛りのついたボリュームスイッチで、
無段階に切り替えることができる。つまり、ひとつのシーンで、連続的にスロ
ーモーションにしていくことができるわけで、サムペキンパー監督の映画のよ
うなシーンが撮れてしまうのだ。

専用のズームレンズには、前述の通り電動ズームが内蔵されていて、マウント
部分の電気接点でカメラ本体から電源を供給される。ズームスピードは前部の
スイッチで無段階に調節可能。電動絞りも同じように本体から電源を供給され、
また当然、絞り値の信号を受け、自動制御される。
これらの機構は、本体のメインスイッチを「AUTO」にすることによって作
動し、「MANUAL」にすると手動になる。

ただ、ここが唯一4008で使いにくい点で、マニュアル操作でのズーム・絞
りの動きが、モーターのギアが噛んだままの状態のため、操作が重く、スムー
ズではない。特に手動でのズームの操作は手持ちだとブレの原因にもなる。
電動ズームは、ズーム速度も微調整できることから、特に手動にする必要性は
あまり感じない。
しかし、絞りだけは、厳密な露出をしたい時などは手動にしたいし、また今か
ら30年前のEE機構は、やや心もとない。そこで、ズームは電動・絞りは手
動で使いたいと思っても、それらはワンセットでメインスイッチの設定になっ
てしまう。

そこで、マウント部の電気接点に注目。この3つの接点のうち、真ん中の接点
が絞り制御用だとわかったので、この接点をビニールテープで絶縁してしまう
と「ズームは電動・絞りは手動」となってしまう。
ただ、一般の撮影に関しては、メーター値を測って、誤差がある場合はフィル
ム感度で調節してしまえば、AUTO露出がたいへん便利である。というのも
4008の露出制御は、適性露出に幅を持たせ、その範囲を+−いずれかに外
れると、絞りを動かす仕組みになっているからだ。これは言葉ではちょっと説
明がしにくいが、ファインダーの中に露出計の針と、適性露出を示す『切り込
み』が回りの黒枠にあり、最初は針が切り込みの真ん中に来るように絞りが制
御されるが、撮影をはじめると、その切り込みの範囲内で針が振れている限り
は、絞りは変動せず、範囲を超えると始めて絞りが動く。
つまり、ひとつのシーンでの多少の光の変化では露出が変化しないため、画面
全体が安定した露出になるわけだ。

また、レンズのマウント近くには、ワンプッシュで『絞り開放・ズームを最望
遠』にするボタンスイッチがあり、シャッターを押す右手で操作できる。最初
はこのスイッチがなんのためにあるのかわからなかったが、これは、素早くピ
ント合わせをするためのものだということが、使っていて理解できた。

8mm用のレンズは、前述のように35mmカメラに比べると焦点距離が短い、
つまり広角レンズであり、しかも日中は絞りを絞った状態で撮影することが多
いのでピント合わせ(手動)はけっこう大変だ。これは、35mm一眼レフで、
超広角レンズをマニュアル絞りで、絞り込んだ状態で操作していることを想像
してもらえるとわかると思う。
ファインダーの中ではピントが合っていると思っても、大画面で映写してみる
とアウトフォーカスということもある。そのため、シーンごとに素早いピント
合わせができるように、このスイッチがあるわけだ。絞りを開放にして、望遠
側でならば、たいへん楽にピントを合わせられる。

こうして見てくると、ボリューのカメラは実に映画を撮影するということを知
りつくして作られていることがわかる。そしてそれは、フランス的な『合理主
義』の産物なのかも知れない。映画を撮るという目的に見合った、使いやすさ
に必用な機能はすべて搭載し、そのためには妥協をしない。そして無駄は省く。

よく言われる、ボリューのカメラはスイッチ類のツマミが小さく操作がしづら
い・それらのツマミやプレートがポロッととれてしまうことがある、などとい
う指摘には、ワタシのZM4もネームプレートの接着がはがれてとれてしまっ
た経験から、なるほどとも思うが、そんなことは『フランス合理主義』からす
れば、些細なことなのだ。(ネームプレートは日本製の接着剤で修復した)

『無駄を省く』という点が強調されると、『ケチ』という評価につながる。
ボリューの弱点といわれる、バッテリー問題は、ワタシは密かにこう思ってい
る。「フランス人にとっては、乾電池を使い捨てるなどということは、とても
もったいなく、我慢ならぬことなのではないか」と。。

4008のバッテリーは専用の内臓された(交換式)7.2ボルトのニッカド
電池である。通常は、バッテリーをカメラ本体に入れたまま、充電器のプラグ
を本体に差し込んで充電する。ただ、ご承知の通り充電池、特にニッカドは寿
命が短い。完全に放電する前に充電を繰り返していると、いわゆる「くせ」が
つき1回の放電量が減ってきて、寿命も短くなるのは、アナログ時代の携帯電
話を使っていた方々は経験済みだろう。

4008は1970年代のカメラであり、仮にうまく使っていたとしても、も
はや多くは耐用年数的に寿命が来ている。いまでも、交換用の電池パックは入
手できたり、内部のニッカド電池の交換もできるらしいが、大変高価らしい。
また、オリジナルの内部電池は、ボタン電池状の薄い円盤状のニッカド電池で
元々容量が少なく、1回の充電で撮影できるフィルムの本数も数本程度といわ
れる。

そこで、現在でも4008をフルに使っている場合の多くは、外部電源仕様に
改造している。もともと、オリジナルのアクセサリーとしても外部電源とその
ためのソケットがあったのだが、アメリカの映画機材専門店での改造では、そ
れと同様な仕組みを市販のニッカド電池とキャノンプラグなどを使い、低コス
トで実施している。

ワタシも、手元にタミヤのラジコンカー用の7.2Vのバッテリーパックがあ
ったので、それを使ってバッテリーNGになっていたZM4を改造した。
改造については、Webの情報と、アメリカのプロショップで改造された1台
のZMのやりかたが大変参考になった。

ラジコン用のバッテリーは1400〜1700mA/hと大容量で、模型店で入手でき、お
勧めである。その他、今だとニッケル水素電池などもあるので、自分の好みでな
んとでもなるだろう。
ただ、本体側は7.2Vとその半分の3.6Vの2系統の電圧を必用とする。
7.2Vはカメラのメインモーターと露出制御、3.6Vは電動ズーム用だ。
ニッカド電池は1.2Vの電池を積層して、必用な電圧にしているので7.2V
の電池パックを使う場合は、分解(といっても、回りのフィルムをはがすだけ
だが)して、半分のところから1本を取り出して3本の線で、本体へつなぐ。
アメリカのサイトには、7.2Vで本体に入れ、抵抗を使って3.6Vにする
方法も紹介されていた。

電源の問題が解決されれば、4008ZMシリーズは向かうところ敵無しの、
プロスペックムービーカメラだ。これでいい映画が撮れなければ、それはカメ
ラマン、いやここは映画界っぽく、キャメラマンの腕の問題だろう。ワタシに
はその腕が「まだ」無い。
腕の無いキャメラマンであるワタシはここである事に気付く。それは4008
には、ストロボ端子がないことだ。また、ある掲示板で知ったのは、機械式の
シャッターを搭載した4008は、一応電気的なリモートコントロール端子が
あり、その機能があるものの、これを使うとシャッターの一連の動作がきちっ
と完結せずに止まるため、始めと終わりに空白コマができるという点だ。

実は、8mmで微速度撮影やアニメーションをやろうともくろんでいたワタシ
は、ここではたと思い悩んだ。4008は、そういう撮影には向いていなかっ
たのだ。さてどうしようと思い、再度いろいろ調べてみるとドイツのNIZO
というカメラは、さすが大手電気メーカーBRAUNの子会社らしく、この辺
の電気関係制御に優れており、インターバルタイマーを内蔵したシンクロ接点
付きのシャッターを搭載しており、レンズがボリューと同じシュナイダーのズ
ームレンズ、とくればこれは使わない手はない。

こうして、映画撮影のためのスーパー8カメラの購入は、35mmカメラと同
じく、コレクション方面の泥沼への道へと続いていたのだった。

・スーパー8 ムービーカメラ

・ライカ ライキナスペシャル
・NIZO 801

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